LINEから見る現代のIT企業のトレンドとは?

LINEのコア事業は広告業ですが、どうやらもっと先を見据えているようです。今回は決算書からそれをどのように見ていくのか、について書かせていただきたいなと思います。

その方法は端的に言うと、『企業はどこにお金を使っているのか?』という所を見ていくという事と、『横比較をしていく』という事です。

 今回は、LINEを通してIT企業の経営面のトレンドについて見ていきたいと思います。

・LINEの戦略事業とは?

直近のLINEの四半期決算を見ていきましょう。LINEのコア事業は「広告業」とオンラインゲームなどの「コンテンツ業」で、2つ合わせて前年比20%近い伸びを示しています。

 

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ただし、左の図のコア事業は売上が446億円と伸びてはいますが、営業利益率が前年比21.0%⇒16.1%と減少しています。この原因としては、スマホの課金の際に行われる決算手数料やクリエイターズスタンプの作者等に対するロイヤリティの支払い、事業拡大に伴う従業員の増加などがあげられています。これらは事業に必要なもの。という事は、コア事業はまだまだ伸びてはいるものの、かけてる費用の伸びほどは売り上げが伸びないような段階に入りつつある可能性があるという事ができます。コア事業がこの段階に入りつつある前に必要なのが新規事業です。

決算書を見ると、実はLINEには、コア事業の他に戦略事業と呼ばれる部門があります。

ここは売上以上に赤字が出ている、「営業損失」の状態なのですが、この決算書の状態こそ、企業が今後育てようとしている事業を見分ける際の指標になります。

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戦略事業の決算を見ると、売上が四半期で60億円、前年比41.6%と成長している一方、営業利益は69億円と大きな赤字を出しています。このように、成長させようとする事業には、売上が上がってこない段階でも大きな投資が必要になってきます。事業を拡大させようとする段階では大規模な投資が必要不可欠だという事です。LINEも、戦略事業の名の通り大規模な投資を行っているという事が出来ます。

 

では、この戦略事業、中身は一体どのようなモノとなっているでしょう。

 

  • 戦略事業にみる、LINEの目指している方向性

LINEの戦略事業を具体的に見ていきましょう。

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このスライドにあるように、まず戦略事業として挙げられているものは「LINEショッピング」「LINEデリマ」「LINEトラベル」の3つ。LINEデリマとは出前形式のデリバリーサービスです。QoQ(3カ月前との比較)では+14.8%と+7.4%の伸びと、激しくスケールしているわけではありません。今後どうなるかは、これからのサービスの質と認知度変化していくかにかかってくると思います。

LINEのこれらのサービスは買い物し、食事をし、旅行の計画を立てる際には最安値を検索してくれるようにする。

コア事業にメッセージアプリやインターネットゲームなどのコンテンツがあることを考えてみても、LINEは「日本人の大部分が使っているラインというアプリを通して、生活に必要な部分の大部分をラインで完結させようとしている」ことがよくわかります。

 

そして、LINのような企業がこの方向性に向かおうとする時、絶対に抑えておかなければならないポイントがあるのですが…。

 

それを感覚的に理解する為に、一つの企業のビジネスモデルをご覧いただきたいと思います。

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その企業はテンセント。今やアメリカを超えるビジネスの中心地になりつつある中国で、BAT(バイドゥ、アリババ、テンセントの頭文字を取ったもの)と呼ばれる3大企業の一つです。

そのテンセントの主力事業はWeChatと呼ばれるメッセンジャーアプリ。そして、それに付随する様々なサービスが提供されています。

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上記の図はテンセントのビジネスモデルなのですが、メッセンジャーアプリの他には上の歯車から「オンラインゲーム」「ニュースや音楽などのメディア」「Fintechのモバイル上の支払い」「自社ブラウザ」など。しかもこれを「♯1」のマークがあるように、ほとんどの分野でナンバー1を取っているメガ企業です。

 

そして、次の図がこのビジネスモデルをさらに強力にしている根幹だと言えるでしょう。

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このように、様々な分野で提供しているサービスの決算を、全て自社の決算システムで抑えてしまっています。テンセントは販売、月間利用できるサービス、広告事業を全て押さえ、最後の決済まで自社のサービスで完結させてしまっています。大きくなる企業はこのような部分をしっかりと抑えており、しかもサービスのコンテンツがよいからより大きくなるという事なのでしょう。

 

・テンセントをモデルケースにした場合のLINEの今後とは?

転じてLINEに戻ってきます。LINEもIT企業であり、自社のサービスで生活が完結できるように動いています。という事は、狙っていくのは間違いなく決済システムだという事が出来ます。それは、最近CM等でもよく見かけるLINE Payです。

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先ほどの背景を踏まえてこの施策を見てみると、LINEがなぜ「10円ピンポン」というキャンペーンや今最も旬のグループを使ってCMを打っているのかが理解できるようになってきます。

LINEにとって、決済システムは今後の自社の将来を左右するほど重要なものなのでしょう。

実際にその施策以来利用率も急増しています。

 

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また、このように急速に利用率を増やそうとしている後ろ側には、政府のキャッシュレス化を推し進めたいという施策と、それに伴ってAmazonSoftBank楽天やメルカリなどもこの決済手段を抑えようと参入してくる「QRコード合戦」が起こっているという事があるようです。

 

この中でLINEは生き残るために、QRコードを読み取れる機会を94,000箇所設置したり、店舗側に導入する際の導入コストを0円にしたりしています。さらには決算手数料を3年無料にしたりと、店舗でもLINE Payを利用して決済できるように様々な施策を打ってきています。

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LINEは決算業を抑えるためにはライバルであるAmazonなどとも戦わなければなりません。しかし、ここで勝ち残った場合、LINEは第2次の成長ラインに乗れるのではないでしょうか。日本の中でテンセントになれるのでしょうか。今後も注目していきたいと思います。

 

ビジネストレンドを読むための決算書の使い方~LINEに見る、『現代の広告業』の威力

今回は、既に「日本社会のインフラ」と化しているLINEについて取り上げます。色々なメッセンジャーアプリがある中で、LINEは日本ではなんと毎月利用する人が7100万人、その中毎日利用する人が84%と圧倒的な利用率を誇ります。

 

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そんなLINEですが、ビジネスの最小単位は広告業、そして金融業に移り変わりつつあります。特に金融などの決済の仕組みはいろんな企業が抑えようとしているところなのですが…企業としてお金を稼ぐ仕組みは一体どのようになっており、どのように決算書に現れているのでしょうか?

紐解いていきたいと思います。

 

・LINEの現在の状況は?

日本国内の毎月の利用者が7100万人超というLINE。そのSNSの利用率はメッセンジャーアプリに留まらず、他のSNSを圧倒しています。

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黄緑色がLINEの利用率。平成24年からSNS全体でトップでしたが、その伸び率は年を追うごとに増加していき、平成29年には他の2倍近くの利用率を誇ります。

そしてユーザー自身も性別、年代全ての世代にリーチしており、まさに日本の「インフラ」の名に恥じないものになっています。

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さて、このように多くの日本人が毎日使うSNS。そこには個人の「生の声」があふれています。これを企業として活用する場合、どのように事業として成り立つのでしょうか。

皆がこのアプリを使うという事は、視点を変えればLINEは多くの人が見るという事。

LINEはこれを使って企業が消費者に「個別に接触することができる広告業」として成長してきました。

 

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以前はTVが完璧に担っていたCMの役目。それは企業を認知してもらい、いい印象を抱いてもらい、ファンになって顧客になってもらうという事。しかし、TV離れも進んだSNSの時代に重要なのがネットを使った更に広くて深い「コミュニケーション」。相手に触れ続けて忘れられないという事が重要です。

LINEには企業のメッセージがよく届きます。その中でも自分が好きな企業のラインはよく開くはず。LINEは、このような消費者と企業をつなぐコミュニケーション装置、言い換えれば広告業がそのメインの事業となっています。

 

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そのような認識の元、決算書を読んでいただければいいのかなと思います。

 

・決算書に現れる、広告事業の止まらない「勢い」

f:id:parrrrrao:20180908180928p:plainでは、いよいよLINEの売上を見ていきましょう。LINEのこの四半期の売上は506億円で、前年比21.8%の成長率です。500億売り上げる企業が前年比20%で成長するってすごくないですか?内訳は今まで見て生きた「広告事業」が全体の54%を占める27.2億円その他のラインアプリに紐づくゲーム(ツムツム等)やマンガ、ゲームなどの事業が全体の34%で174億円、そして戦略事業と呼ばれる部門が全体の12%を占める60億円の売上となっています。

 

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続いて広告事業のより詳細なデータですが、ディスプレイ・アカウント・その他の広告に分かれます。ディスプレイはタイムラインやLINEニュースにくっついてくる広告で売上92億円、アカウントは企業アカウントで140億円、その他はNaverまとめ等から入ってくる広告を指している物で40億円の売上があります。

この事業の前年比はなんと42.0%!!!非常に高い伸び率を示している通り、企業は「消費者とコミュニケーションができる場」としてLINEを利用しています。

そう考えたときに、やはり「アカウント」の広告がメインを占めているのが気になります。公式アカウント数も増え続けてきていますね。ラインの企業のアカウントの料金をご存知でしょうか?なんと最初の4週間お試しプランでも800万円です!!(+_+)年間で払うプランに移行しても、年間で数千万円の支出になってしまいます。ですが、ラインの広告にはやはりそれだけの魅力があるという事なのです。

ラインは現代の広告事業を担っていますが、SNSの時代ではこのようなポジションを取っていることがいかに強いのかを理解することができます。

 

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上の図はLINEから提供される情報の一部。これによって、「的外れな広告」を打つ必要がなくなります。SNS時代に大きく変わった広告の形は、私はこのようなものだと思っていて、今激しく伸びている企業はこのような部分をしっかりと抑えています。

 

例えば「メルカリ」。通常このフリマサイトを運営する企業は、シェアリングエコノミーの企業だと思ってしまいますが、実際の伸びている源泉はユーザー同士の購買行動が全てインプットされるという「広告業」としての伸び代も多分に含まれているようです。企業の持つ購買行動のデータが、AI等のビッグデータと組み合わさるとどのようなことが起きるか?これらを想像すると、「顧客の行動記録」を抑えられる企業というのはこの時代には非常に勝ちやすいのでしょう。

 

そして、このような「広告、個人アドレス」を抑えているLINEですが、広告事業が安定的に伸びている今、新たに投資を行っているようです。

その事業はLINE PAYなどに見る「金融業」なのですが…

この財務内容などはまた次回書かせていただきます(@^^)/~~~

 

ZOZOから学ぶ、財務諸表から見る意思決定~意外なキャッシュ調達方法

企業に限らず、手元資金を増やすには収入を増やすか、支出を減らすかの2択しかありません。ZOZOの資金調達の構成の変化は、その両取りができる方法でもあります。

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(構成比の変化)

こちらは、ZOZOの資金調達方法の構成比。純資産という項目が大幅に減少し、銀行から1年以内に返済を求められる流動負債の割合が大幅に増えています。

通常大企業がこのような行動をとることはなかなかありません。企業は純資産の比率30%以上を死守することで、企業の財務的安全性を担保することが出来ると言われているからです。ですので、大企業においてはこの純資産の比率が30%といわず60%~70%近くになるところが目立ちます。

ところが、今期ZOZOはその純資産の比率を大幅に下げて22%にまで下げてしまっているのです。

 

この比率が動いた大きな原因は約240億円の自社株買いです。

実際の2つのバランスシートの変化を見て頂きましょう。比較をすることで、3か月間で一体何が変わったのか?が分かるようになります。

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比較するとこのように、3か月の間で「自己株式」という項目が増えていることが分かります。

「自己株式」とは、企業が自社の株を投資家から買い戻したものを言います。今回は3億1164万4285株のうち634万9100株を買い戻したようです。

 

ZOZOは、この自己株式の購入を銀行から原資を借り入れて行っている為、今期はこのような構成になったということが出来ます。

 

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この図の通り、資金調達の構成方法が変化した大きな要因は、この自己株買いにあると言ってよさそうです。では、ZOZOがこのような多額の借り入れを行って自社株買いをする理由はどこにあるのでしょうか。私は、ZOZOが自社の資金繰りを改善するためにこのような取り組みを行ったのではないか?と思っています。

 

・ZOZOはいつもお金がカツカツ?

ZOZOの決算書を数期分読んで抱いた印象なのですが、ZOZOは「資金繰りがかなりタイト」「借り入れは必要でない限りしない」というイメージです。

例えば、この四半期の支払いを全て済ませた時点でのZOZOの手元キャッシュは177億9千万円ですが、同じ四半期で払った販管費は183億7600万円。ちょっとなにかあったら回らなくなりそうなカツカツさだということが出来ます。

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更に前期はZOZOSUIT開発の為に今までにないほどの投資(約45億円)を行い、今期も40億近い投資を行おうとしているところです。

 

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ZOZOは本業でお金を稼ぐ力が十分にあるとは言え、この大きな投資は、ただでさえタイトな資金繰りを、更にタイトにしようと考える要因になったのかもしれません。

ZOZOはその資金繰りの一環として自社株買いを行ったのではないでしょうか。以下、その根拠を見て頂きましょう。

 

・自社株買いを行うと、「配当」を少なくすることが出来る。

会計上、投資家から投資してもらうと、純資産に。銀行からお金を借りると借入金になります。どこから資金を調達するかによって名称が変わります。一見すると大きく違うように見えるのですが、結局のところ、使わせてもらっているお金に対して何かお返しをしなければならないことには変わりがありません。

そのお返しの多くは現金で、株主に対しては「配当」として、銀行に対しては「金利」として支払われています。

 

今回着目したのはこの「配当」と「金利」の額の違いです。同じお金を借りるときに、「配当」より「金利」の方の支払いが少ないのであれば、それはZOZOにとっては支出を減らすことに繋がり、本業で儲ける体制の整っているZOZOはお金をためていくことが出来るでしょう。

 

では金利から見ていきたいと思います。240億の借り入れに対し、ZOZOがこの四半期で支払った金利は2300万円。ザックリ計算ですが、金利は0.3%しかありません。この借入金はどんどん返済が進むでしょうから、その分だけ今後支払う金利も少なくなってくるはずです。仮に四半期ごとに均等に返済するとすると、トータルで4500万の金利の支払いになります。

 

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これに対し、6月26日に行われたZOZOの株主総会で行われた配当については、1株あたり17円。今回買い戻した634万9100株分なので、この分で支払いが減った配当は1億793満700円。中間配当は12円なので、トータルすると1億8412万3900円にもなります。

 

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仮の計算ですが、その支払いトータルの差は、実に1億3912万3900円にもなります。同じ240億円でも、調達方法でZOZOが支払わなくてはならない金額に大きな差が出てくることがお分かりになるかと思います。

 

これからまだまだキャッシュを投資に回したいZOZOにとっては、この調達方法を変えることによるキャッシュの節約(1億3912万3900円→4500万)は魅力的であると言えるでしょう。

 

以上、ZOZOが自社株買いを行う理由について考察しました。

企業の問題になりそうな部分を見ていくとこのような結果が出てくるので面白いですね。

ZOZOの行動は一つ一つにしっかりと意味があるという事がよくわかりました。

今後のZOZOはどうなるのか、期待しながら次の決算を待ちたいと思います。

 

 

ZOZOから学ぶ、財務諸表から見る意思決定~BSを見てみよう。

ZOZOSUITを開発し、オーダースーツまで発表して世間を騒がせたZOZO。

しかし、これらの開発には多くの費用が掛かっています。そのお金をねん出するために、ZOZOは今期ある工夫を行いました。企業の意思決定の結果は決算に現れます。今回はその企業の意思決定の確認の仕方について見ていきたいと思います。

 

・ZOZOは多額の投資を惜しまない。

ZOZOはあまりキャッシュをため込まず、投資に回してしまう企業です。

前期の設備投資額はZOZOSUITを開発する為に45億近くの設備投資を。そして今期も40億近くの設備投資をする予定です。

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この投資額が多いのか少ないのかは、ZOZOの規模感を考慮しないといけません。

たとえ45億円の設備投資だったとしても、100億円のキャッシュしかない企業だと身の丈に合わない設備投資ですが、1000億のキャッシュを保有している企業の投資としては適正かもしれません。このように、投資額の意味は会社の規模感によって大きく異なります。

 

さて、そんなZOZOの前期の保有キャッシュはというと、245億円。ザックリとですが、実に保有キャッシュの20%近くを将来の投資に回したという計算になります。ZOZOは非常に高いペースで売上を上げ続けているのでこの規模の投資をしても保有キャッシュは増え続けています。が、これはかなりの高額の投資だと言えるのではないでしょうか。逆に言うと、この投資額の高さから考えてもZOZOのオリジナル商品の力の入れ具合がうかがえますね。

 

例えば、自分が今、自身の持つお金の20%近くを将来稼ぐために投資することを想像してみてください。この投資はかなり高い確率でリターンが返ってきますが、もしかしたら投資の全額を失ってしまうかもしれません。このように考えると、かなり高額な投資であることが分かるかと思います。他企業と比較すると、例えば成長するために投資を惜しまないGoogle。こちらはこの四半期に$5.5B(約5500億円)を投資していますが、保有キャッシュは$102.9B(約10兆2900億円)で、投資額は保有キャッシュの約5%です。この事からも、ZOZOのオリジナルアイテムの投資額の大きさがうかがえます。

 

・資金調達の方法を知るためにはBSを確認。

このようにZOZOはオリジナルアイテムを作成する為に非常に多額の設備投資を行っていますが、その資金はどこから来るものなのでしょうか。企業がお金をどのように集めたか。これを知る為のヒントもまた決算書に載っています。企業のBS(バランスシート)を見ていきましょう。

バランスシートとは、ザックリ言いますとどこからお金を集めてきて、そのお金をどのように使っているのかを示す書類です。

お金を集める方法は大きく分けて①投資家から集める②銀行などから借りる③自分で儲ける。の3種類です。

 

このように細かい数字が並んでいますが、

中央でこのように2つに分け

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その右側がお金の集め方

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左がお金の使い方を示しています。

 

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今回確認したいのは

この右側の内容になります。

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これはさらに3つ分解することができます。

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簡単に分類すると、①の借りるは流動負債や固定負債に、②の投資してもらうは純資産の「資本金」という欄に、③の自分で稼ぐは純資産の「繰越利益剰余金」を確認すればザックリとその額が分かります。負債は銀行などからの借り入れや取引先への掛けなどが入ります。返すまでの間そのお金は自由に使えるので、これらはまとめて「お金の調達」に分けられます。また純資産には、株主が購入した株券分の金額と、今まで稼いだ純利益が積み重なっていきます。

今回見ていくのはこの「構成」です。銀行からの借り入れが多いのか、あるいは株主の払い込みが多いのか、自分で稼いだものが多いのか。この比率を見ることで、企業がどのよう意図をもって財務調達を行っているのかが分かるようになります。

 

・ZOZOの資金調達の構成比が大きく変化。

さっそくZOZOの構成比を見てみましょう。

 

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これは前期末の2018/3/31時点のデータです。資金調達、つまり右側に注目すると、純資産が58%あります。ZOZOはこの純資産のうち、自分で稼いだ額である繰越利益剰余金が94%を占めます。ZOZOは本業でとても儲かっている企業ということが出来ます。

ちなみに、このような構成は日本の上場企業ではよく見る光景で、企業の安全性が高く、潰れにくい企業の形といわれています。実際、上場企業の自己資本利率が40%を超えると倒産確率は劇的に減少します。しかし、企業経営においてリスクとリターンは一体のもの。「安全性が高い」とは裏を返すと「成長速度が低い」という可能性もあるのです。

安全性を重視して借入を抑えて純資産を厚くするのか。純資産の積み重ね以上に借入を行い、レバレッジをかけて設備投資を行い勝負に出るのか。この部分は経営者の性格や思考回路が出るところでもあります。

 

さて、上記のような構成だったZOZOですが、3ヶ月後の決算発表において、ZOZOの資金調達の構成に大きな変化が見られました。その割合がこちらになります。

 

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なんと純資産の割合が58%から22%まで落ち込み、逆に1年以内に返済する資金調達方法である流動負債が39%から74%に激増しています。

比較してみるとこのような形です。

 

 

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横に並べてみると違いがより実感できます。このような決断の背景には何があるのでしょうか。

 

実は、この決断の背景を財務諸表を使って読み解いていくと、ZOZOの優れた財務戦略も浮かび上がってくるのですが・・・

長くなりますのでこの続きはまた次回に。近いうちに書かせていただきますのでよろしくお願いいたします。

社会人の為の決算書の使い方。ZOZOオリジナル商品の実績とこれからを考える。

・PBブランドはどうなっている?

ZOZOといえば今期は「ゾゾスーツ」の話が欠かせないでしょう。

このゾゾスーツで体型を測ることによって購入することが出来るPBブランド、その最初の成績はどのようなものだったのでしょうか。

 

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・まず当初の実績と中長期計画をチェック

まず当初実績と中長期計画をチェックしてみます。

 

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届いたゾゾスーツで60%の方が計測し、

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その中の50%の方が購入に至るようです。

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図にするとオレンジ色の部分の方が購入されているようですね。その実績は1人当たりの購入金額約7500円です。

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この発表が出た当初はカットソー(1500円)とストレートデニム(4900円)の2品でしたので、大体カットソー2枚とデニム1本というのが平均的な購入者の購買動向でした。

 

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この実績をそのまま当てはめた中長期計画が次の図になります。

今期(来年の3月まで)にZOZOSUITを1000万枚配布する。そして今期の売上225億という計画のようですが、1000万枚配って30%のお客さんが7500円分を購入すると225億になるという想定のようです。

 

しかし、今現在は上記2品の他にオクスフォードシャツ、ビジネススーツなど他の商品も増えてきています。そしてついに今期PB事業の実績が発表となりました。

 

・PB,今期の成績は?

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まず配布状況ですが、100万枚配布は達成したようです。

そしてPB事業の目玉の一つにもなったビジネススーツ、こちらは2万枚の受注があったようです。

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この数字が多いか少ないかは判断が分かれそうなところですが、もともとZOZOは男性の顧客の割合が30%程度です。その平均年齢は31.4歳。

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100万枚配布した中でこの比率が変わってないとすると、男性は約32万人。その中、大体仕事などでスーツを着られる方は日本人のうちの大体60%程度のようですので、100万枚配布した内でビジネススーツのターゲットになってくるのは大体19万人程度です。19万人がZOZOで売り出されたビジネススーツをみて2万着購入されているので、大体11%強、ターゲットの10人に一人くらいが購入に至っているのではないでしょうか。

 

サイズ感が命のビジネススーツにあって、試着が不可能なネットでの購入でこの購買割合だとすると、この数値はなかなかではないでしょうか。他の人の感想を見て購入を決めようとする方もいらっしゃるでしょうから、今後のビジネススーツの購入の伸びは実際のスーツが届いたお客様の声によっても変わってくるかもしれません。

 

PBブランド全体の話に戻ると、このような単価の高いビジネススーツが含まれているため、平均購入価格は上がっています。

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ここで少し気になるのが、当初は開示されていたCVR(届いたうち計測や購入した人の割合)が非開示になっている事です。届いても購入に至る方の割合は減少した可能性もあります。

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そのような状況の中、今期の売上実績は1.1億円となったようです。

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合計の売上目標は200億円と、当初のCVRを当てはめただけの計画より25億下げていますが、かなり挑戦的な数字であると言えるでしょう。実績の売上1.1億に加え、受注済みのビジネススーツがすべてキャンセルされずに売上となった際に計上される5.6億円はありますが、それを除くと残りは193.3億円。

単純に今期の平均購入金額9719円で割ると、193.3億÷9719円=198万8888人で、あと200万人弱近い顧客が必要です。

という事は、今期は1000万枚配布して200万人を顧客とする必要があります。これを達成する為にはどういったことが必要なのでしょうか。

 

・もっとも効果的なことは、計測のハードルを下げる事。

現状のままではこの数字を達成することは難しいのではないでしょうか。というのも、ZOZOSUITが発表になり「試してみたい!」と思える人でも全体の30%しか計測がなされていません。ところが今後は、そのように自ら欲しがっている人以外のところにも配布をしていく予定とのこと。

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これは旧型が発表となった際の前澤社長のツイートです。今後はこのツイートのようにコラボ企画などで配布したり、ZOZOで購入した商品に同梱して発送するとの事でしたが、このように配られる方は当然あまり自分でZOZOSUITを使って計測したい!という欲求を持っておられないでしょう。そもそも計測して自分のデータを見てみたい!と思っていても今の計測方法は若干面倒です。

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着用して、この姿勢で回転しながら12回撮影します。そして回り方がまずいと計測値に数センチのずれが出てしまいます。これを続ける作業は、自ら求めていない方が「ちょっと使ってみようかな?」と思うにはかなりハードルが高いのではないでしょうか。

 

ただ、ZOZOも恐らくそこはしっかりと認識していて、将来の展望についても少しだけ言及されています。

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そしてZOZOSUITを開発した時並みの設備投資も行う予定のようです。ホールガーメントなどのニットの設備投資などもあるでしょうが、ZOZOSUITの改良費用という事も十分考えられると思います。

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このように、将来はマーカーを必要せず、しかもスーツも必要ないかもしれないという展望を展開し、多額の設備投資も行っています。スーツなしで全身の数値を計測するというのはどのようなものなのか私には想像もつきませんが、いずれにしても計測するためのハードルを下げる為の施策は今後どんどん行われる事でしょう

 

私は、前澤社長はマーケティングの天才だと思っていますが、同時に非常に論理的な方ですので、日本を驚かすような仕掛けと計測率を上げるような仕組みづくりは並行して行ってくるような気がしてなりません。

  

今期中にZOZOSUITが進化し、計測する方が増えていく事によってこの200億の売上という目標は達成されるのでしょうか。どんどんと達成して「世界中をかっこよく、世界中を笑顔に」できる会社が日本からまた一つ現れるといいですね!

その第一歩として、このZOZOSUITの次の打ち手を想像しながら今後もZOZOの動向をチェックしていきたいと思います。

 

 

次回はZOZOの「財務の事をしっかり理解しているなあ」と思った財務調達の方法について書かせていただきます。

社会人の為の決算書の使い方。YoYを利用して,ZOZOの変化の原因を把握しよう!

前期までの決算が絶好調だったZOZO。ゾゾスーツを配布してプライベートブランドの実績も組み込まれた決算書が公開されましたので確認していきたいと思います。

なお、今回確認する四半期決算書はZOZOの19/03期。つまり2018年の4~6月分の内容となっています。

 ・YoYは変化の理由を教えてくれる

まずこの3か月分の企業の成績を調べてみると、今までのZOZOのパターンとかなり違うことが分かります。

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この表だけだとピンときにくいと思いますので、季節を含めて表を作ったのがこちらです。

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ZOZOは洋服を販売する企業ですので、季節によって売れる服は当然異なります。ですので、比較するときは前期比(3か月前との比較)よりYoY(前年比)を比較する方がより企業の販売の動向が分かりやすくなります。このYoY(前年比)を確認すると何がいいのか。それは、企業が何か意図をもって取り組んだことが浮き彫りになってくるという事です。

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例えばこれは2017年~2018年の商品取扱高と販管費の関係です。

ZOZOは今まで前年比+20%~+40%で成長してきています。そして、その売上に比例して売上を上げるために必要な費用である販管費も上昇してきました。

なお、2018年以降販管費の伸びが商品取扱高の伸びを超えているのは「ツケ払い」や「送料200円固定」にしたのが原因です。これらの政策が始まったのは2017年秋から。

本格的に影響が出始めた2017年冬~2018年秋の1年間だけ販管費がYoY+40%以上で伸びていますが、1年たった2018年冬にはその伸びが落ち着いたところからもそれがお分かりいただけると思います。

 

しかし、そうは言っても今までのZOZOは売上と販管費は同じような伸びを示していました。ところが、ここに今期のデータを加えると様相が様変わりします。

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ご覧いただけるとわかるように、販管費が売上の伸びを無視して異常に跳ねているのです。

これは販管費が商品取扱高の何%を占めているか?を調べるときに使う販管費率を確認しても同じことを言うことが出来ます。

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今までツケ払いなどの影響があったとしても20%前半で推移していた販管費比率が、この2019年4~6月においては26%と急激に上昇しています。

このように急激に販管費が上昇するパターンというのは、基本的に「何かに投資をしたとき」です。それが人を雇ったのか、多くの土地を借りたのか、細かく見ていかなければ理由はわかりません。

そこでこのような場合には、販管費がどのような原因で伸びたのか?について確認する必要があります。

 

 

販管費の明細を見ると、増加した要因が浮き彫りに。

では、販管費はどのような要因で増加してしまったのかを確認していきたいと思います。

ここも、何がどう変わったかを確認するためにYoYを確認していきます。

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前年比で注目すべき部分をブルーで強調しましたが、前年に比べ、広告宣伝費が449%と激しい伸びを見せています。また、荷造り運賃とその他も増加しています。増加の原因となる部分を確認するとZOZOSUITの大量配布が原因と書かれていますね。

有価証券報告書などを確認したところ、どうやらZOZOSUITの無料配布などの費用を全て広告費として計上しているようです。

その他についても、ZOZOSUIT1の清算と新型ZOZOSUITの製造報酬が計上されています。ザックリの計算ですが、この3か月だけで人件費を抜いてもZOZOSUIT関連で40億近く計上されています。前年からの販管費の増加額は65億程度ですので、増加した分の約60%近くはZOZOSUIT等のPB事業が原因となります。

取扱高の伸びに比べて販管費の伸びが著しいことになっていたのはZOZOの新しく始めたPB事業の影響が大きいという事が分かりますね。

 

これで販管費が増加した理由も分かりました。ZOZOの本業で著しい失敗があったわけではなく、新しい事業を立ち上げるために使われた費用が計上されているという事です。このような投資は企業が成長していく為に必要な投資ですので、悪い費用ではないと思います。

ここからPB事業がどのように伸びていくのかは注視しておく必要があるでしょう。

また、この企業はとにかく現預金がカツカツです。その影響もあってか、財務をしっかりと使った面白い資金捻出の方法を行っています。

次回はそのあたりについて書いていければいいなと思います。

 

・最後におまけ

話の本筋から外れますが、仮に広告宣伝費がZOZOSUITに費用増加分だとすると、ZOZOSUITの製造コストも計算することが出来ます。

今期の広告宣伝費は15億4800万であるのに対し、前期は3億4500万です。この差である12億300万円がすべてZOZOSUITの制作費用とすると、7/31までに配布されたZOZOSUITは112万8333枚を割ったら一枚1066円となります。なんと、マーカータイプのZOZOSUITは1枚作る製作費は1000円ちょっとという事です。

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世界中にZOZOSUITを配布できる理由が分かりますね。製造コストを下げる事が出来たため、大量に無料で配布したとしても耐えられるようになっているのです。これが前作の近未来的なZOZOSUITであればもっと製作コストは高いはずなので大量に配ることはできなかったでしょう。我々消費者からみるとあの近未来感が失われたのは少し残念ですが、納得のいく変更だという事もできそうです。

 

 

次回、このZOZOのPB事業はローンチして現在どのような状況になっているのか?について書き、その次にZOZOの財務戦略について書いていきたいと思います。

通信事業で見るユニットエコノミクス。企業の強みと弱みを見てみよう。

税理士試験を終えましたのでここからまた更新していきます。

今回は法人営業の方におススメ、企業の強み弱みを会計から把握するユニットエコノミクスという概念について、日本の通信会社を例にとって見ていきたいと思います。。

 

 ・売上を見ても会社の違いは判らない

日本の大手通信会社である三社は、その実態が大きく異なります。

しかし、通信事業においては何か大きな違いがあるのでしょうか?それを見るためにユニットエコノミクスという指標を使います。

これを見ることができると何がいいのか。それは、企業の強みと弱みが一気にわかるという点です。

例えば、企業を比較しようとするとまず売上高を見るかと思います。しかし、通信会社は通信のほか、ガジェットの販売、修理など様々な収入が混ざっており、非常に比較しにくい状況になっています。開示されている通信事業の売上をグラフにすると、KDDIが突出していますが、これによってKDDIが一人勝ちしているかどうかわからないのです。

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しかも、これを見てそこからどのように提案をするか?と考えるとさらに難しくなってしまいます。どのように売上を伸ばせばいいのか?もなぜこの3社には差があるのか?もここからは読み解くことができません。それを、ユニットエコノミクスという指標を見ることによって企業に提案できる要素まで分解していこうと思います。

 

・ユニットエコノミクスとは?

ユニットエコノミクスとは、①「顧客を獲得するためにいくら使っているのか」②「その顧客は企業にどれだけのお金をもたらしてくれるのか」といった事を調べる指標になります。

この指標は、シバタナオキさんという「決算書が読めるようになるノート」を公開されている方のお言葉を借りると、「企業のオリジナリティそのもの」ということができます。

必要なデータは①1顧客足立の売上、②その顧客の解約率③顧客獲得のために掛けた費用④それによって増えた顧客の数の4つです。

 

今回の通信会社で使うデータは1.設備投資額2.累計顧客契約数3.一人のユーザー当たりの売り上げ(ARPU)4.解約率の4つのデータを使います。

この4つのデータを使いユニットエコノミクスを調べることで、企業の売上にどの要因が大きく関係してくるのか。他社と比較してどの数値が優秀で、どの数値が劣っていて、結果が異なってくるのかが分かるようになります。

とは言ってもややこしいので、私は下記のような図のイメージを持っています。

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真ん中の箱の左側はライフタイムバリューという①÷②で求める指標です。1ユーザーの現在の価値です。右側は顧客獲得コストという③÷④で求める指標。

企業が1ユーザーを獲得するために支払ったコストを示します。

この2つを比べると、ユーザーを獲得するために掛けたコストに比べてそのユーザーの価値は高いのか?を判断することができます。

 

では、4つのデータの数年分の推移を見て頂き、そこからユニットエコノミクスについて見て頂こうかと思います。

 

・1ユーザーの価値は?を計算できるARPUと解約率

まず通信会社のARPUを見てみましょう。ARPUとは、一ユーザー当たりの売上になります。グラフにしたので見ていきましょう。

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これは、一ユーザー当たりの平均金額を示しています。DoCoMoSoftBankは割引されている額がIRに記載されていますのでそれを反映していますが、KDDIはこの割引額を開示していません。2社では大まかに1000~1200円ほどの割引がなされていますので、KDDIも1000円ほどの割引が行われているものとみなしてARPUを計算しています。

なお、直近1年のデータはこのような数値です。

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これを平均してみると、おおよそ通信会社大手3社の一ユーザー当たりの売上は4000~5000円という事ができるでしょう。通信業界規制産業で大きく差別化することは難しいという噂でしたが、実際に極端な値下げは難しいようです。これをデータとして先ほどの図に落とし込んでいきます。

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これだけでは何とも言えませんので、次に解約率を見ていきます。

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解約率は3社とも非常に低い率になっています。最も高いSoftBankでさえ直近の数字は1.10%。他の業界の解約率に比べて圧倒的に低い数値です。最も解約率の低いDoCoMoに至っては0.69%と、非常に低い数値となります。

 

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このARPUと解約率を使うと、ライフタイムバリュー。すなわち、その1ユーザーが最終的に企業にどれだけのお金を落としてくれるのかが分かります。

方法はとても簡単で、ARPU÷解約率で求められます。例えば、ソフトバンクであれば直近のライフタイムバリューは4,310円÷1.10%=391,818円1ユーザーが契約すると、だいた40万円弱の価値があるという計算になります。これはファイナンスの割引現在価値の概念です。この考え方はまた別の記事で書かせていただきます。

 

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この指標によると、DoCoMoの1ユーザーの価値は68万円、KDDIは56万、SBは39万で、SBは1ユーザーの価値が低いことが分かります。これはSBの解約率が高いことが原因だと思います。例えば、SBの解約率が0.1%下がるだけでSBのユーザー価値は約4万円上昇します。通信会社にとって、解約率は非常に重要な数値であることがよくわかります。

 

・1ユーザーを獲得するためにいくらかかるかを知る

次にその1ユーザーを獲得するために必要な費用を調べてみます。これは掛けた費用にたいしいくらユーザーが増えたのか?を見ると分かります。

通信会社の設備投資額のグラフは下記の通りです。

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ここは少し意外でしたが、SBは他2社に比べて一貫して設備投資額が低いです。とはいえ、それでも直近3ヵ月は1533億円投資していますので、通信産業は投資額が非常に大きいことが分かります。設備投資と累計契約数は、1年間投資し続けてきた結果ですので、設備投資は年間の額を計上します。

 

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そしてこの投資の結果獲得した顧客の総数は以下の通り。

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面白いのは、3社とも大体4000万件に収れんしていっているという事です。全体的には緩やかに伸びてはいっていますが、基本的に一人一台スマホを持つ時代になってきておりますので、頭打ち感が見えます。この顧客は、年間でどれだけ顧客を獲得できたのかが重要となりますので、前年比のデータを計上します。

これで右側の要素も埋まりましたので、顧客一人を獲得するために掛けたコストを計算すると以下のようになります。

 

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ソフトバンクは前年比で顧客が減少していますね。解約率が他2社と比べると高い影響がここにも出てきてしまっているように思います。他2社は顧客を獲得することができていますが、その数に大きな違いがあります。

比較すると、DoCoMoKDDIはかける設備投資額は大きな差がないのにも関わらず。DoCoMoの新規獲得顧客は1100万とKDDIと比べると5倍近い顧客を獲得しています。この結果、DoCoMoは1つの契約を獲得するために約4万円を支払っているのに対し、KDDIは24万円を支払っています。

 

 

さて、すべての箱が埋まりましたので比較をしていきたいと思います。

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1位は圧倒的にDoCoMoですね。1人の顧客を獲得するために5万円弱のお金を使い、なんと68万近い価値を持つ顧客を獲得できています。次点でKDDI、最もまずいのはなんと売上収益で最も高い額を記録していたSBです。

 

・まとめ、もし私が営業マンであれば

さて、これらのユニットエコノミクスを分析し分かったことをまとめます。

DoCoMo

顧客獲得のために掛けた費用に対して獲得できた顧客が非常に多いため、経営的に非常に安定しています。僕が営業マンならここで新規獲得した顧客の年齢層を調べます。その顧客の年齢層が高いのであれば、低い層に訴求するための方法を考えたりすることが必要になってくるでしょう。

 

KDDI

良くも悪くも大手3社の中で真ん中というデータになっています。これは売上でダントツに高い状況と少し異なることをこのデータが示しています。

売上が大きいからといって安心はできないかもしれません。私が営業マンならそのずれの要因をもっと深く探っていきます。加えて、可能であれば解約率でしょうか。この解約率を下げる施策を考え出すことができれば、KDDIDoCoMo以上のユニットエコノミクスを獲得できるかもしれません。

 

SB

ここは課題が非常にはっきりしています。解約率が高いことですね。

私が営業マンであれば、この解約率が高い原因は何かという事、さらに解約率が高いことがSBにお通信事業に大きな影響を及ぼしていることを訴求していくことになるかと思います。SBは通信事業を独立させていく動きがありますので、今後その施策を加速させることができる提案をできると強いかもしれません。

 

いかがでしたでしょうか。売上だけ見ていても気が付かないことをユニットエコノミクスは教えてくれます。このように様々な角度で分解していくことによって、企業にとって効果的な打ち手を見つけることも、企業をより深く理解することも可能です。

法人営業の方は特に、このユニットエコノミクスを使いこなして頂けると非常に面白いかなと思います。