財務諸表は会社の成績表!

儲かっている企業は何が違うのか?足踏みしている企業は何が原因なのか?決算書を基に分析し、優秀なビジネスモデルをご紹介します。

BSを使ってTOKYOBASEの戦略を読み解いてみよう①

勢いのある企業、TOKYO BASE

この企業のBSを見て、企業のビジネスモデル、会社の戦略、経営方針を考えたいと思います。

 

BSはまず割合を見る

 

BSは少しめんどくさいのですが、決算説明書の他に、BSを簡略化したものを使って割合を出してあげるとかなり財務状況が分かりやすくなります。

簡略化BSはこちら。(左右の%は、一番下の資産合計に対しての割合です。)

 

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財務諸表はこのようにT字で表を区切るのですが、右側はどうやってお金を調達したか?左側はそのお金がどのような形に変わっているのか?を示しています。

 

一番重要なのは右側下の部分の純資産です。これは大きければ大きいほど良い。とされています。だいたい上場企業であれば30%ほどあれば合格だといわれているのですが、TOKYOBASEは50%を超えていますね。

そして、次に重要なのは左側の一番上の流動資産の部分です。ここには現預金など企業がすぐに使える現預金などが表示されています。これは全体の80%超を占めていますね。

 

TOKYOBASEは、アパレルの会社ですので、商品である資産、それを売った場合の現預金が流動資産に計上されてこのような形になると推察されます。

PLの回でみたように、この企業は店舗販売の他にEC販売もすごく伸びているのですがまだメインは店舗販売でした。

 

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この店舗は毎年何店舗かずつ拡大しているのですが、その店舗は固定資産の有形固定資産というところに計上されています。全体の9%を占める投資その他の資産は何が計上されているのでしょうか。

 

店舗を賃貸している場合には、ここに「差入保証金」という科目が入ってきます。これは建物を賃貸したときに収める必要のあるお金を示しているもので、賃貸が終了したら原則的に帰ってくるお金です。

アパレルブランドは商業ビルに間借りしているでしょうから、TOKYOBASEの入っているビルの種類、場所等を考えますとこの差入保証金が多額となっている予測が立ちます。

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このように新規出店する場所も、集客が見込めそうなところが多いですね。これは恐らく狙ってのことでしょう。

 

 

それでは、ザックリと全体の雰囲気をつかみましたので、決算説明書の数字を見てみたいと思います。

 

 

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こちらには年次比較されている数値を出してくれていますね。

こうやって比較してみると、右側の表の負債・純資産(お金をどうやって調達しているのか)については右下の「純資産」の中の「利益剰余金」が激増しています。ここには一年間の売上から費用などの経費を引いた「純利益」が加算されていきます。前回の純利益は1126でしたので、これが2017/2月期の2166に足されてこのような数字となっています。

 

後は長期借入金の増加が目立ちますね。長期借入金は、一年以上返済しなくていい借入金のことを指します。

優良企業は運転資金としてだったり、固定資産の投資の為にこのような借り入れをすることができます。

 

このように、本業で稼いだり、銀行などからの借り入れを通して得たお金はどのように使われているのでしょうか。

 

これは左側、つまり資産(お金が会社の何に変わっているか)の部を見るとわかります。

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最も大きい額は現預金です。かなり潤沢な資金を有していますね。販売時の利益や借入金の大半はまだここに眠っていると考えてよさそうです。

 

次に商品(棚卸資産)が増加しています。

これには良いパターンと悪いパターンの両方が考えられます。良いパターンですと、商品が売れに売れたが商品が足りないため、企業の売り上げに見合った棚卸資産を補充したパターン。これは商品を欲しい人がどんどん商品を買ってくれるサイクルを作り出せるため、売上がさらに加速する原因にもなります。

 

悪いパターンは商品が売れ残ったまま、新しい商品を作ってしまっているパターンです。洋服は数年もたつと陳腐化してしまうため、売れない商品がどんどん積み重なっていくこととなってしまいます。

 

なので商品がずっと増えていると、少し怖いパターンもあり得るのですが、今回はどちらでしょうか。

これを分析するときに最も簡単な方法は、「棚卸回転率」という指標などを使うことです。(棚卸資産÷売上原価)

 

この指標は「商品がだいたい何日で販売されるか?」を示します。この数字が異常に伸びていくことになると、それは売れない商品が結構あるのでは?という推察をすることができるようになります。

 

なお、TOKYOBASEは店舗ベースでこの指標を使っているようです。

 

また、決算説明書を確認すると、TOKYOBASEは商品の在庫にはかなり敏感のようですね。

MD戦略が見込み違いであったため在庫消化を優先したという記述や、店舗経営において棚卸回転数を使用しているという記述がみられます。

 

 

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 このような記述を見ると、良いパターンの棚卸資産の増加のように見えますが、棚卸回転率を使ってデータを使って根拠を押さえておきましょう。

 

先程の在庫回転率に1年の日数をかけると、

在庫回転率棚卸資産/売上原価×365日(棚卸資産が売り上げに代わる日数)」

となり、これは平均して棚卸資産が何日で売り上げに変わるのか?がわかります。

 

 前期の回転率は「938(棚卸資産)/4379(売上原価)×365日=78日」

今期の回転率は「1446(棚卸資産)/6218(売上原価)×365日=84日」

  

このデータは非常にざっくりですが、平均して仕入れた商品が84日以内に販売されるというデータを示すということでした。

 

 

この数値だけでははっきりしたことは言えませんが、これだけ棚卸資産を増やしたにもかかわらず、意外と指標上は日数の増加は抑えられています。

これは棚卸資産の在庫を大幅に増やしたとしても売り上げが大幅に増えているため、今回の棚卸資産の増加は機会損失を防ぐためのもの、ということができそうです。

 

 

なお、実際に経営に使おうとすると、商品ごと、価格帯ごと…というように会社のビジネスモデルごとに細かな分類を行って管理します。

 

TOKYOBASEでは店舗ごとに管理をしているため、より細やかな分類をして管理しているでしょう。

そうすると、ただ商品が足りないから仕入れを増やせ!ではなく、どのような商品を仕入れた方がいいのか?という判断基準になります。

 

この辺りはデータ管理と現場感覚のバランスというものが重要ですので、この管理を現場に任せているTOKYOBASEの意図は非常に明朗です。

 

 ・TOKYOBASEの戦略

 

ここからは完全に推察なのですが、各店舗各店舗に権限を委譲して経営を行っていくというのはTOKYOBASEの大きな一つの戦略なのではないかと思います。

というのは、店舗の長がこのような数値を管理して、社員さんがこの数値を確認できる環境だとすると、働いている個人個人は自身の店舗の総売り上げを、TOKYOBASE内の他店舗と比較するということを自然と行っていくことになるのではないでしょうか。

これは社内でも数字で売り上げが勝っている、負けているが明確にわかり、競争という意味でモチベーションが結構上がります。加えて「スーパースターセールス制度」などもあり、売上がしっかり立った人にはしっかりとインセンティブが用意されています。

 

次の資料も決算説明書に記載されている物で、ここからも競争を通して販売力を上げ、販売力が高い社員にはインセンティブを与え、さらに能力の高い人材を確保しようとしている姿勢がうかがえます。

非常に論理的なアプローチなのではないかと思います。

 

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自身も以前このような数値管理をしている企業にいたことがありますが、これは自身の成績が企業の成果に影響を与えているという感覚を非常につかみやすい。企業の戦略が社員の行動指針に影響を与えているという意味で非常に参考となる例だと思います。

 

 

 ・まとめ

 

この棚卸商品などの数値を使ってわかるTOKYOBASEの経営戦略は、まず立地の良いところに出店し来場者数は確保、そして販売の増加に伴う機会損失を減らすため棚卸商品を大幅に増加させたものの、その管理はしっかりと各店舗で行い無駄な在庫は持たないという意識を徹底しています。

そしてこのような戦略を円滑に回していくために自社内での競争を活性化させ、高いインセンティブを提示することでさらに優秀な人材も取り込もうとしている。とったところではないでしょうか。

 

 

棚卸商品だけで結構長くなってしまいましたので、この記事はこの辺で。

BS上、あと2点気になるところがあります。

それは棚卸資産が増加しているにもかかわらず大幅に増えている現預金。この現預金は長期借入金の増加と連動しているように見えるのですが、一体何に使うのか。

 

そして少し面白い動きを見せている固定資産の関係会社株式の増加。

このような点を読み解くと、PLの編で少し言及したTOKYOBASEの今後の戦略が浮き彫りとなってくるかと思います。

 

これを次の記事で書きたいと思います!

それでは、長くなりましが、ここまで読んでくださってありがとうございました!!