財務諸表は会社の成績表!

儲かっている企業は何が違うのか?足踏みしている企業は何が原因なのか?決算書を基に分析し、優秀なビジネスモデルをご紹介します。

社会人の為の決算書の使い方。ユニットエコノミクスについて考えてみよう。

会計は企業の鏡、実態を映し出すものだと思っています。そして現状を正確に知ることができれば、より発展するための打ち手やマイナスになっている部分の改善点が見えてくるものです。

 

その中の指標の一つであるユニットエコノミクスは、各企業のオリジナリティそのものだとおっしゃる方もいるほど。

その最も根っこにある考え方は「投資した金額に対してどれだけのリターンが返ってくるのか?」という考え方です。[i]

その為、ユニットエコノミクスの概念を身に着けると、企業の個性だけでなく、強みや改善点なども数字や公式を使って理解することができます。

式になっているため、具体的でピンポイントな改善策を提示できるのも特徴です。

さてそんな便利なユニットエコノミクス。その公式は「ライフタイムバリュー÷顧客獲得コスト」です

 

…とはいっても、ライフタイムバリューや顧客獲得コストなど、聞いたことの無い方も多いと思います。ライフタイムバリューは、「将来どれくらいのお金を得られるのか」顧客獲得コストは「新規の顧客を一人獲得するために使ったコスト」を示します。

 

 

ただし、ユニットエコノミクスは具体的な事例を見た方が分かりやすいと思うので、スタートトゥデイのZOZOSUITをもって説明していきたいと思います。なお、この事例はシバタさんという方の内容を参考にしています。

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このスタートトゥデイのZOZOSUIT。これはセンサー方式からマーカー読み取り方式に変わりました。この変わったことによるユニットエコノミクスの改善について説明していきます。ユニットエコノミクス考え方は「投資した金額に対してどれだけのリターンが返ってくるのか?」ということでした。

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改良ポイントの中にコストが大幅に減少といった記述がみられます。

この点が前述のユニットエコノミクスに大きなインパクトを与えます。

 

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現在のマーカ付きのスーツですが、これの作成コストは1つ約1000円ほどです。また、スーツを送付する際の送料もかかりますが、これは消費者と同じ200円とします。

これによると、ZOZOSUITを顧客の元に届けるために掛かる費用は1200円となります。

これでユニットエコノミクスの式の一つの要素を得ることができました。

ただ、これを単純に「ユニットエコノミクス=ライフタイムバリュー÷1200円」とすることはできません。この1200円はいわば広告を打ったようなもので、まだ顧客を獲得はしていないからです。

 

 

どれだけの顧客を獲得したのかを見るために、ZOZOSUITが届いた顧客がどの程度プライベートブランドを注文するのか?というデータを見ていきます。

 

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配布した人のうち約60%が自分の体のサイズを計測し、その60%の人のうち50%が購入し、その購入金額は平均7,500円となっています。これをどのように考えればいいでしょうか。

 

まず顧客獲得コストですが、1200円で配ったZOZOSUITのうち、0.6×0.5=0.3で、30%が売り上げに貢献しています。そう考えると、顧客獲得コストは1200円÷0.3=4000円で、顧客1人を獲得するためにかかったコストは4000円になります。

 

これに対してライフタイムバリューはどのようになっているでしょうか。

ライフタイムバリューは実際の公式は「(ARPA×Contribution Margin)÷CustomerChurnRate」で、日本語では「顧客一人当たりの利益÷平均顧客寿命」なのですが、この考え方は別の記事で詳しく説明します。今回は平均顧客寿命は無視します。この寿命が延びれば延びるほど商品としての価値が上がるという事だけ意識して頂ければと思います。

さて、平均顧客寿命を無視するとすると、みるべき金額は顧客一人当たりの利益額です。

ZOZOのプライベートブランドの利益率は明らかにされていませんが、「原価率が高い(洋服に掛けるコストが高い)」という事を売りにするTOKYO BASEの原価率が50%ということ、現段階で3型だけという事を考えて、原価率を40%とすると、残る利益は7500円×60%=4500円の利益が残ります。

 

これがZOZOSUITのユニットエコノミクスになります。「新規の顧客を一人獲得するために使ったコスト」を4000円かけると、「将来得られる利益」が4500円残るという事になります。こう考えると、ZOZOSUITは「投資して得られるリターン」を考えても、非常に優秀なのではないでしょうか。

 

さて、改めてユニットエコノミクスを確認してみましょう。

ユニットエコノミクスは「ライフタイムバリュー」÷「顧客獲得コスト」です。

そしてそれをさらに分解すると、

ユニットエコノミクスは「将来獲得する利益÷平均顧客寿命」÷「顧客獲得のための支出÷新規獲得顧客数」です。

 

これをZOZOSUITで見てみると、

「4500円÷平均顧客寿命」÷「4000円÷0.3人」です。おそらくZOZOTOWNの社長もこの式は完ぺきに理解しており、ツイッターのやり取りも顧客への期待に応えるなどして

平均顧客寿命を延ばしたり、計測する人を増やそうとしているように見えます。

 

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前澤社長という非常に多忙であるはずの方がわざわざツイッターで顧客とのコミュニケーションを重視する意図がよく分からなかったのですが、これらのツイッターのコミュニケーションを平均顧客寿命を延ばしたり、計測する人を増やそうとする意図が少しあるのであればそれも納得がいきます。この一つ一つの変身を24万人のフォロワーが見ていると思えば影響も大きいでしょうし。

 

 

このように、ユニットエコノミクスという概念を理解していると、社長の考えていることも理解できたり、自身も効果的な打ち手を考えることができます。

今回であれば、おそらく「平均顧客寿命をどのように伸ばすべきか?」「ZOZOSUITを届けた後に計測、購入する人をどのように増やすか?」という事を考えていくのがいいかなと思います。

 

この際に一回の購入平均額7500円を伸ばしていく方法を考えていくのはおそらく悪手です。というのも、ZOZOの顧客はスマホの購入がメイン。

スマホでの購入は、PCなどに比べて「出荷件数は増えるが、1回あたりの購入金額は減少」する傾向にあります。そして、実際にZOZOの1回当たりの購入で約4,300円です。

 

このように考えると、1回当たりの購入額が7500円を超えているプライベートブランドは大健闘しているのではないでしょうか。

 

以上、ユニットエコノミクスについて確認していきました。これを使いこなすことができるようになればかなり企業に対するアプローチが変わってくるのではないでしょうか。少し難しい概念ですが、理解する価値のあるものだと思います。それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました。

 

 

[i] これは通常、「1ユーザー当たりの生涯売上と、その1ユーザーを得るためにかけたコスト」に分解できます。