財務諸表は会社の成績表!

儲かっている企業は何が違うのか?足踏みしている企業は何が原因なのか?決算書を基に分析し、優秀なビジネスモデルをご紹介します。

会社の儲けの仕組みが分かる。ユニットエコノミクス・初級編

今回は、「簡単にユニットエコノミクスが使えるようになる方法」について書いています。

 

 ・ユニットエコノミクスとは

様々な会計指標がある中で、特に社会人の方に知っておいて頂けると便利だと思うのがユニットエコノミクスです。

公式としては「LTV(ライフタイムバリュー)÷CAC(顧客獲得コスト)」なのですが、より単純化すると4つの構成要素に分解できます。

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この中央にある二つのボックスがユニットエコノミクスの根幹で、「顧客一人から入ってくるトータルのお金」と「その顧客一人を獲得するためにかけた費用」です。

 

そして、入ってくるお金は①「1人の顧客からの月の売上」と②「顧客寿命(解約率)」に分けられます。

これに対し、支出するお金は③「顧客獲得のために使った広告代などの費用」と④「それによって獲得した新規顧客の数」に分けられます。

 

①「顧客から得られる売上」②「顧客寿命」③「顧客獲得のための費用」④「新規顧客の数」この4つに分解することによって、企業の成長率をより詳細に把握することができます。

これを理解することができると、同じような業態の2社でも明確な違いを理解することができます。

 

・ケース1 二つの会社の比較

A社とB社という2社があったとします。A社が広告費に50万円を支払って10人のお客さんを、B社は100万円を支払い、同じように10人のお客さんを獲得することができました。

 料金はA社は毎月3000円、B社は毎月1万円です。広告費を上乗せすることで、B社はA社に比べて毎月7000円も多く払ってくれる顧客を得ることができました。

 

ではこの場合、A社とB社どちらの方が儲かるのでしょうか。これを考える為に、まず先ほどの図にこの数値を当てはめていきます。

 

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①はA社3000円B社1万円②??③A社50万円B社100万円④A社10人B社10人です。

実はこのように、先ほどのデータだけではユニットエコノミクスを計算することはできません。②の顧客の寿命(解約率)という視点が抜けているからです。

 

会社の儲けの仕組みを知る際には、実はこの顧客寿命という視点を持つことがとても大事です。顧客寿命が短いのであればできるだけ短期で利益を得る方法を、逆に顧客寿命が長いのであれば最初の契約はお得感を出す値段設定にして「損して得取れ」の方法を採用することも可能です。

 

ここでは、A社は提供されるサービスが高コスパであり、満足度が高く解約率は5%(10人中0.5人が解約する)である一方、B社はやや割高感があるため解約率は10%という事にしましょう。

  

すると図はこのようになります。

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A社は1人の顧客獲得のために5万円をかけると、その1人から最終的に平均6万円が得られるのに対し、B社は1人当たり10万円をかけても最終的に10万円しか得られないという事が分かりました。

 

B社はユニットエコノミクスで考えた場合、それほど儲からないのです。

ちなみに、スタートアップの業界ではこの比較をしたときに、かけたコストに対し3倍のリターンが返ってくるサービスであれば投資家は投資を検討すると言われているようです。

 

このように、必要なデータさえそろえばユニットエコノミクスを計算することは難しいことは決してなく、簡単に企業の取り組みが儲かるかどうかの可視化することができるようになります。

 

・ケース2 ZOZOSUIT

さて、ここで改めて前回取り上げたZOZOSUITについてこの図をもとにユニットエコノミクスを見てみたいと思います。

上の事例と同じように、①売上②顧客寿命③顧客獲得のための支出④得た顧客数を抽出してみたいと思います。

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スーツ一つにつき1000円、ここに送料200円がかかります。これは③の費用ですね。

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このデータから①の売上は7,500円であることはもちろんのこと、④の得た顧客数も分かります。

ZOZOSUITを配布した数に対し、計測した人は60%、そのうち購入まで行った人が50%です。

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この図全体がZOZOSUITを配られた人だとすると、色のついている部分が購入者になります。という事は、一つのZOZOSUITにつき、60%の半分、つまり30%の人が利用し服の購入に結び付いたことになります。

その為、④は0.3人になります。

  

改めて式を確認してみましょう。

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これで②の顧客寿命(解約率)まで計測することができました。

数値さえあれば、ただ当てはめていくだけという事がお分かりいただけたのではないかなと思います。

 

ちなみに、このZOZOSUITの恐ろしいところは、顧客寿命を考慮しなくても売上という面では1回の購入で十分元が取れているというところです。

1回での平均購入額が7500円である為、顧客獲得のコストである4000円を超えてしまっています。

服を作るのに必要な原材料等が50%程度に抑えられていれば、一回の配布で利益まで回収できてしまうという非常に優れたユニットエコノミクスになっています。

 

これが、仮に平均してZOZOSUITの計測者は3回ほど商品を購入するとしましょう。

すると解約率は0.3となるため、式はこのようになります。

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ZOZOSUITに掛ける費用に対して25,000円の売上になって返ってくるという超強力な商品になります。残る利益は12,500円。

 

スタートトゥデイ社が今後3年の成長ドライバーに位置付けるのももっともな数字です。そして今後、この体系の計測にスーツすら要らなくなったその日には、この数値はより改善されていきます。

ただ単にECサイトの売上を増やすことを考えていてもこの発想に至ることはできません。このようなユニットエコノミクスという概念、覚えておいても損はないと思います。